●小泉─今日は、「村井知事と女性経営者座談会」ということで、皆様にお集まりいただきました。女性経営者4名から自己紹介をかねて一言お願いします。 |
●齋藤
─斎藤コロタイプ印刷(株)の齋藤裕子と申します。
弊社は大正11年、仙台市一番町に「斎藤写真工芸所」として創業し、七夕の絵はがきの印刷・販売を始めました。創業から90余年、100年企業を目指しており、私は4代目となる老舗でございます。
毎年、約3500校の卒業アルバムの製作・印刷をメインで行っており、ほかに一般印刷全般も行っています。地元に根差した企業として仙台本社、愛子工場のほか、札幌、盛岡、東京、関西に営業所があります。従業員は120名で、繁忙期となる1〜3月はパート・アルバイト・出向・派遣など100名ほど増員して作業にあたっています。IT化が進む中、子供たちの思い出を形に残す紙媒体の卒業アルバムをこれからも作り続けていきたいです。子供たちにとって、卒業アルバムが一生の宝物となるように、心を込めて品質第一をモットーに従業員一同頑張っております。
東日本大震災は、中学校・小学校の卒業時期と重なり、交通手段も完全復旧しない中、何とか納品できた時は涙を流して「ありがとう」と多くの喜びの声をいただきました。また、NPO法人「よみがえれ卒業アルバム」が立ち上がり、震災でアルバムを紛失された方などにアルバムの再製や支援を行っております。昨年より理事・事務局をさせて頂いており、社会貢献にも力を入れていきたいと思っております。
●煖エ
─飯坂温泉、秋保温泉とともに奥州三名湯として東の横綱に選ばれた鳴子温泉 名湯の宿鳴子ホテルの煖エ弘美でございます。
弊社の創業は明治6年(1873年)、煖エ家として15代目となります。現在、老舗が淘汰される時代にいかに老舗企業が生き残っていけるかという課題に取り組みながら、200年企業を目指して日々精進しております。
旅館には2つの役目があります。1つは日本伝統文化の継承です。2つ目は自然の大地の恵みをいただいているので、その温泉力と地域社会貢献を次世代に継承することです。旅館業は地域の社会貢献として非常に大きな役割がありますので、独創性を活かして日々進化していかなければなりません。それは鳴子温泉の賜りの湯を承る者としての責務だと思っております。
■知事
─鳴子温泉は東の横綱と言われるだけあって、泉質がよくいいお湯です。今回熊本地震により、九州の温泉地も被災しているので東北が支援しなければと思います。
●沼田
─モイスティーヌ東北販売椛纒\沼田太年子でございます。
「素肌美容法を通して社会に貢献する」という強い信念を持ち、平成11年に夫婦で起業し、17年目を迎えました。私は30年以上美容の仕事に携わっておりますが、私の理想とする「トラブルのない健康な素肌」「魅力的な素肌づくり」「アンチエイジング」の3つを叶えてくれるモイスティーヌ基礎美容法に25年前に出会う事ができました。お客様は100%女性で、女性が活躍している国には成長があります。そして女性が輝いている国には未来が拡がります。国内外を問わずいろいろな地域でも活かせたら幸いに思っております。女性は素肌が輝く事で自信を持ち、そして自立心が芽生え、夢や希望に満ち溢れます。
現在、私は全国に数十人の起業家を育成させて頂いております。皆さん普通の専業主婦や会社員の方々でした。肌が輝き明確な夢や目標を持ち、環境さえ整えば起業して成功の道へ一歩ずつ前進している事を実感しております。これからもそんなみなさんのお手伝いをしていきたいと思います。
●青野
─NPO法人ひよこ会と鰍ミよこ会の代表を務めております青野と申します。
私が起業したきっかけは、16年前に我が子を安心して預けたいと思う保育園を探していましたが、なかなか見つからず、ないなら作っちゃおうという簡単な決断で保育園を立ち上げました。おかげ様でニーズに合わせてたくさんのお子様をお預かりする中、認可保育園等も増設しました。保育園で1人の障害児との出会いをきっかけに、6年前にNPO法人を立ち上げ、障害児通所支援施設をはじめ、集団保育と個別支援をしていくことにより、3歳から18歳までの障害児の一貫支援ができるようになりました。しかし18歳以上の障害者の行く末を考えた時、就労支援事業所が少なく、受け入れ先が難しい状況だったので、だったら自ら立ち上げようと昨年、就労支援事業所として「六丁目農園」姉妹店としてカフェレストランをオープンしました。
現在は保育園、児童館、障害児、障害者、約350名の方と関わっており、スタッフは130名で98%女性雇用です。
また障害者雇用促進法により全国の企業様より相談が多く寄せられ、今年一般社団法人を立ち上げ障害者雇用を通じ、少しでも、社会のお役に立てればと思います。
●小泉─震災から5年が経過しました。宮城県の復興をけん引されるお立場として、震災からこれまでを振り返っての感想をお聞かせください。また「創造的復興」の進み具合はいかがでしょうか。 |
■知事
─全国、世界から温かいご支援をいただき、かなり復興が前進したなあと手応えを感じます。とはいえ、4万6千人の方が未だ仮設住宅等で暮らしている現状ですので、全ての方が災害公営住宅等の恒久的な住宅で安心して住めるまでは気を緩めず頑張っていこうと思います。ただし、今は熊本地震による被災地支援を全力で行おうと指示しました。
10年、20年先を見据えた復興として「創造的復興」を掲げ、例えば仙台空港の民営化や東北医科薬科大学医学部設置や広域防災拠点整備、水素エネルギーの利活用推進など、震災があっても東北は元気になったんだ!と思ってもらえるような復興を目指していこうと思います。
●小泉──みなさんから「知事に期待すること」は何かありますか? |
●齋藤
─弊社は「卒業アルバム」の製作をメインで行っていますので、価格競争の激化もそうですが、少子化も大きな影響があります。宮城県として取り組む、今後の少子化対策について教えて下さい。
■知事
─女性が働きやすい環境をつくるために保育所整備は必要です。OECD(経済協力開発機構)加盟国24か国で女性の就業率と出生率の相関を調べてみたところ、1970年は「女性の就業率の高い国々は出生率が低い」傾向だったのですが、2000年になると「女性の就業率の高い国々は出生率も高い」傾向に転じています。以前は女性の就業率が低い国では、出生率は高かったのですが、現代では女性の就業率の高い国が出生率も高くなっているという現象が見られるのです。このことから女性が子育てしながら働ける環境づくりを社会全体で考えていかなければなりません。また今年度から県も市町村等と連携し婚活支援事業を始めます。世界的に見てもアジア圏は非常に子どもが少ないので重要な課題だと思っています。
●煖エ
─今年7月の仙台空港民営化で、観光による交流人口の増加が期待されます。仙台地域だけでなく、鳴子温泉などの県北や、東北地方全体にも観光客の皆様にいらして頂きたいと思います。知事はどのようにお考えでしょうか。
■知事
─今度、平成19年に設立した東北観光推進機構の審議会があります。東北観光推進機構は東北観光の認知度向上と、国内・海外の観光客等の誘致を推進し、観光産業の振興と東北経済の発展に寄与することを目的に設立されました。東日本旅客鉄道且謦役会長の清野智会長のもと、仙台空港を窓口として利用者数を300万人から600万人に引き上げ、二次交通(バス・鉄道)を整備し東北各地に足を運んでもらおうと計画しています。また外国人観光客には非日常の空間、温泉や自然を楽しんでもらえるように考えています。
●煖エ
─我々も本気で行政とタイアップしていかなければなりません。
■知事
─鳴子温泉のみなさんは一致団結していますよね、一緒にがんばりましょう!
●沼田
─「一億総活躍社会」「女性の社会進出」と盛んに言われております。女性の創業支援政策について、どのようにお考えでしょうか。
■知事
─昨年6月に経済団体、関係団体、行政等が連携・協力し、一体となって女性が活躍しやすい環境の整備を推進することを目的として、15団体からなる「みやぎの女性活躍促進連携会議」を設立しました。同年7月3日には「女性の力で企業を活かす─その実践と効果」としてキックオフイベントを開催し、「働き方の改革を進める」「それぞれのキャリアと人生を応援するイクボスになる」など、女性の活躍促進に向けた「キックオフ宣言」を行いました。
女性の活躍による地域経済の活性化や多様な地域課題の解決に期待が高まっている中、各職場における女性の登用促進やワーク・ライフ・バランスの推進、地域活動への女性の参画推進などにより、女性が持てる力を存分に発揮できるようにするための環境整備が求められています。県内の企業における女性の活躍に向けた気運醸成と取り組みを促進するため、「女性のチカラを活かす企業」取組宣言や認証を実施し、優れた企業には知事表彰します。
創業支援についても非常に大事なことで、みなさんのように老舗企業を引き継ぐことも新たに起業することも勇気が必要で簡単なことではないですね。県では被災地再生創業支援事業を行い、被災した沿岸部15市町で起業する場合のスタートアップ資金を助成します。また、(公財)みやぎ産業振興機構の実践経営塾(ビジネスプラン支援プロジェクト)ではシニアアドバイザーやビジネスアドバイザーとの「マーケティング」「商品」「技術」「資金・収支計画」等ディスカッションを通して、事業計画を徹底的に考え抜き「儲かる仕組み」へブラッシュアップします。まずは成功事例をどんどん広げていくことが大事ですね。
●青野
─ 待機児童問題や、保育士不足の問題など、保育園や保育士、子育て世代を取り巻く環境は厳しいと感じておりますが、何か考えている対策はありますでしょうか?
■知事
─平成27年4月1日現在で待機児童数は926人です。宮城県では昨年度2300人の児童受入れ枠を拡大しましたが、受け入れ枠を拡大してもなお待機児童の問題は解消されないのが現状です。保育士人材バンクを立ち上げ約150名が就労しましたが、まだまだ足りません。保育事業は市町村管轄なので、我々は市町村を補佐する役割としてサポートしていきます。
●小泉─女性起業家の多くが、未来の宮城県の益々の発展に期待しております。最後にその期待に対して知事より一言お願いします。 |
■知事
─この国は残念ながら少子化です。労働力が不足し、女性が社会で活躍するのが当たり前になりました。我々の役目は女性が働きやすい環境づくりを徹底していくことだと思います。また男性の育休についても、民間ではなかなかできないのであれば、だったら行政が模範を示そうと率先して「休みなさい」と言っています。長期間でなくても奥さんを助けることができたなら、何かしら次に繋がりますよね。
少しずつ意識改革することで社会全体が子供を産み育てやすい、女性が働きやすい環境をつくり、そして女性が活躍することで社会の活力に繋がりますので、どうぞみなさんがリーダーとなり宮城県を盛り上げて下さい。
●小泉─ありがとうございました。村井知事のご活躍、創造的復興が順調に進みますようご期待申し上げます。 |