女性起業家を応援するヒューマンネットワーク新聞マガジン「わんからっとL」

わんからっとL 76号

2015/02


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プロフィール─秋田県秋田市出身。東北大学経済学部卒業後、昭和50年に仙台市職員に採用。市民局生活文化部女性企画課長、教育局生涯学習部生涯学習課長などを経て、平成13年せんだいメディアテーク館長、平成15年市民局次長、平成17年仙台市教育委員会教育長、平成19年仙台市副市長(〜平成21年3月)。平成21年8月22日より現職。

被災地を支える中枢都市仙台市をけん引される市長として
振り返ってどんな4年間でしたか。

 震災後最初の一年は、復興の道筋がどうなるのだろうと先が見えない中で、手探りで復旧復興をやってきました。改めて4年経って振り返ってみますと、100万都市としてたくさんの方々が復興にかかわって下さいました。行政だけでなく、商工会議所や経済団体、企業などがそれぞれの力で全国、世界のネットワークでご支援いただきました。市民の皆様も過去に宮城県沖地震を経験したことで心の備えがあったと思います。町内会や地域団体で復旧復興をされていましたし、県内外から引っ越してきた被災者の方々を地域で温かく見守って下さり、いろんな方がそれぞれの立場で持てる力を100%も120%も出して下さったのがこの4年間だったと思います。
 おかげ様で仙台市は復興が早かったです。経済活動もほぼ滞りなく進んでおり、また復興公営住宅も今年3月までに2008戸の整備が完了します。集団移転先も同じく年度末までに13地区の造成が完了する見込みで、すでに640戸を超える宅地が決定しています。
 このように復興が目に見えるようになってきたことは、まちの総ぐるみの力だなと実感します。
 今年は、仙台市の復興計画5年の最終年となります。被災された方の衣食住の住をしっかりと手当てすることで、更にステップアップしていただけるよう、頑張ります。
2、3年目からはさらにスピードアップしたように感じます。
 仙台市は平成元年に政令指定都市となり27年目になります。職員は9500人ほどおり、また全国からもご支援をいただきました。復興にはいかにマンパワーを確保するかが重要です。政令指定都市だからこそ、復興に関する専門家もたくさんおりましたし、まちの力をうまく活かしながら迅速に進むことができました。  最盛期には、他都市から70人以上の派遣職員の応援があり、仙台市復興計画の事業の中には平成27年3月をもってある程度終了するものも出てきました。今までは十分ご援いただいたので、今後は仙台市として沿岸部の市町村の復興をさらに応援したく、今年の4月から、宮城県内の自治体に28名の職員を派遣します。仙台市では区画整理や再開発事業もしておりましたし、その経験を活かして支援していきたいです。
「仙台市を起業日本一」とのことですが、具体的にどのようにお考えですか。
女性のための起業スクール 震災後、今自分がやりたいことをやらないといけない!地域のために今これをしたい!どうしてもこの仕事を起こしたい!という切実な自分の夢や気持ちがわいてきて、「今でしょ!!」という思いに、みなさんがなったのでしょう。その気持ちがこれからの仙台市の可能性を切り開いていく大事なものになると思いました。
 女性起業家も含めて小さな志をしっかりビジネスの形にするそのお手伝いを仙台市がすることで、今後長い目で見た時に、小さな志一つ一つが拡がり会社が生まれ、従業員が増えることで、仙台市の活気につながればいいなと考えます。そのため平成26年1月「仙台市起業支援センター アシ☆スタ」を設立しました。とても人気がありまして、今では当初の3倍のお問い合わせがあります。女性の相談員もおりますし、先輩起業家の経験談を聞く機会を設けたりなど、出会いの場も提供できればと思います。
今年3月に仙台市で開催される「国連防災世界会議」について
 東日本大震災でM9・0という大規模な被害を受けた100万人都市は、世界中でもないと思うんです。この震災が激烈なもので、通信機能や交通機関、10万人以上の避難民が発生した時の対応、避難所の運営、避難所での病気の予防などの経験から、たくさんの教訓を得ました。3回目となる「国連防災世界会議」はとても重要な会議です。震災の経験で比較的うまくいったことはもちろん、うまくいかなかったことも率直にお伝えし、世界に発信しなければなりません。  会議は東北の安心・安全をアピールする場であるとも考えます。世界中の方から来仙いただき、被災地の復興を目で見てもらうことで安心して日本の観光の中で東北にも足を運んでいただきたいです。原発事故の影響で不安になっている方もたくさんいると思いますので、食べ物はきちんと検査していることと、我々が平穏に生活していて安心だということを知っていただきたいです。「国連防災世界会議」には193の国や地域から約5000人ほど、その他民間団体など合わせて約4万人が出席しますので、世界中に仙台市、東北を知ってもらいたいですね。
また今年12月には「地下鉄東西線」が開業しますね。
東西線車両基地敷地内  予定通り、平成27年中に開業することができますのでよかったと思います。まちづくりの中で鉄軌道はとても重要で、特に地下鉄は天候に左右されず信頼のおける交通機関です。今までの南北線の1本から東西線が合流することで、まちとしての発展が円のように丸く広がっていく可能性のある交通軸ができます。
 これまで利用されなかった地域のポテンシャルが高くなり、まち全体の価値が上がっていくと考えます。南北線は住宅地と仙台市中心を結ぶ地下鉄と考えると、東西線は大学、動物園、今年7月開業の水族館があったり、また国の重要文化財に指定されています薬師堂や商業地もあり、沿線に多様な要素がちりばめられています。また南北線とは違った路線になりますね。産学連携することや観光、沿線開発も含めて進めていくことで、これからの仙台市がさらに大きく力をつけていくための土台になると思い、すごく期待しています。 2014年7月ニューヨークでの国連経済会理事会(奥山市長参加)
今年の抱負と市民の皆様、わんからっとL会員の方々にメッセージをお願いします。
 仙台市は、小さくても自分の気持ちを形にしていこうという動きを応援していきます。これからの人口減少の社会で大事なのは人材です。人と人との出会いによって学び、また相手にも自分の持っているものを分かち合い、お互いに良き人材になります。また積極的に人と出会い、自分の思っていることをアピールすることが大切です。そしてその出会いが次につながることがとても大事だと思います。誰でも、七転び八起きで失敗を糧に成長するものです。努力を重ねればきっと形になりますから。一人ひとりが失敗を恐れず、どんどん突き進んでほしいです。
 引っ込み思案にならずに、地下鉄を利用して外に出て積極的に人との出会いを求めてチャレンジしてほしいですね。

   

女性起業家を応援する新聞マガジン「わんからっとL」は、これからの21世紀の
異業種を越えた起業家向け情報ネットワーク新聞マガジンを創っていきます。

ともに輝きながら、自分の夢を成功させませんか?

   


次に、つながるように
編集長
 震災から4年。被災地である仙台市は、力強く目に見えて復興へ押し進んでいるように感じます。奥山恵美子仙台市長とのインタビューから、常にリーダーシップであり続ける都市の市長として、3月に国連の防災世界会議を開催、12月に地下鉄東西線開業と”有言実行”として仙台では前進目覚ましく、ほかのどこの市町村よりも早く復興を遂げて、さらには、宮城県の沿岸部への後方支援にも動いていきたいと語っていらっしゃいました。
 そして、仙台を日本一起業しやすいまちにしていきたいと提言を掲げました。
 「引っ込み思案にならずに、地下鉄を利用して外に出て積極的に人との出会いを求めてチャレンジしてほしい」と─。
─まさに、転勤できたばかりの核家族のお母さんや、子育てしながら一人悪戦苦闘している若いママに手を差し伸べていくようなやさしい都市が創られていく─。そんな感想を持ちました。
 実際、仙台市起業支援センター”アシ☆スタ”に伺ってみると、取材している間にも、二人の女性が次々と企業の相談に来ているところでした。
 一人は就学前の二人のお子さんを連れて・・・。
 わんからっとLのこの情報誌は、もとは、起業というキーワードより主婦の活動グループの紹介から始まりました。そして、業種の違った方たちと異業種交流会の人たちの紹介と続きました。そのうち掲載した方たちを講師にしたセミナーを開くようにしました。
 参加者のほとんどの声が「何かビジネスをしたい」「今、こういうことを始めている」「つながりを求めて交流会に参加した」と主催者であるこちらが驚くほど、積極的な意見でした。それをもとに、さらに女性起業家を全面的に打ち出して、成功して輝いている女性のインタビューをご紹介することと、そして、長く経営している企業の中で、特に活躍している女性を紹介するようにしました。女性が本来滞在的に持っている「自分を生かして働きたい」を情報誌にちりばめました。
 今の仙台市の方針とまさにマッチした女性起業家を応援する新聞マガジンに19年かけて育ってきたように思います。「一人ひとりが失敗を恐れず、どんどん突き進んでほしいです」と奥村市長は、満面な笑顔でそう語っていらっしゃいました。わんからっとLも同じ思いです。小さくても自分の気持を形にしていこうという動きを応援していきたいと思います。一人ひとりが輝くダイヤモンドの原石なのだから・・・。

わんからっとL編集長
小泉知加子