女性起業家を応援するヒューマンネットワーク新聞マガジン「わんからっとL」

わんからっとL 68号

2013/02



小泉─震災から2年。東北の被災地を支える役割を担う仙台市を牽引する奥山市長、昨年はどんな1年でしたか?

奥山─私にとっても仙台市にとっても、昨年一年の大きな目標は、自宅を失われた方々のお住まい再建の応援をすることでした。
 仙台市の特殊事情として、沿岸部はもとより、郊外団地でも激烈な土地の滑動崩落によって自宅に住むことができなくなった方が多いということがあります。
 やはり「家」というのは誰にとってもすべての活動の基本ですから、この取り組みは最重要でした。振り返ってみると、昨年2月に復興庁が発足し、私どもも大きな期待を抱きながら事業のご相談をさせていただきました。何度も何度も話し合いをして現地の状況をご理解いただき、結果として防災集団移転促進事業と造成宅地滑動崩落緊急対策事業として、国の予算をきちんといただくことになりました。
 平成25年は、いよいよその事業を本格的にスタートさせることになりますので、住まいをなくされた方々には具体的な移転先などが見えてくる年になってきます。

小泉─つまり、昨年はアウトラインができた年、ということですね。

奥山─そうです。これから取り組む「新しいふるさとづくり」のアウトラインができました。昨年12月には荒井地区で移転先宅地の抽選を行い28世帯が決まりましたし、今年の4月からは北六番丁復興公営住宅に第一陣の方々に入っていただきます。

小泉─やっと具体的になるという。

奥山─応急仮設住宅にお住まいのお一人お一人が、2年待っていただいて、ようやくご自分が将来どこに暮らすか、ということが具体的に見えてくる年になろうかと思います。昨年はそのような事業の「仕込み」の期間でしたので、私たち役所の人間には見えていても、市民のみなさまには何が進んでいるかがわかりづらい1年だったかもしれません。

小泉─では、今年はより具体的にどうなっていくのかがわかり、スピード感を感じられる1年になりそうですね。

奥山─そうです。また、昨年9月からは「地域防災計画」の見直し作業を進めています。12月から地域説明会を行ったりして、さまざまな方のご意見を伺っています。この3月末には新しい計画ができ上がります。それをベースにして、4月からは、地域ごとにセミオーダーメイドで地域版の防災計画づくりを進めていきます。
 今回の震災で、私たちはさまざまなことを学びました。仙台市外から仕事などでいらっしゃっていた方々が帰れなくなったり、避難所では停電で情報も入らず、避難所運営上の問題などがありました。「鉄は熱いうちに打て」といいますが、まだ震災の経験を肌身で覚えているうちに国の政策を待たず仙台市でできることは始めよう、ということです。

小泉─具体的にはどんなことですか。

奥山─たとえば駅に近いエリアでは、市民の避難者と市外から来ている避難者とをどう分けたらいいのか、そして帰宅困難者の方々のための備蓄もする必要があるのか、とか。あるいは高齢の方が多い地区では、指定避難所の小学校は坂の上だから、平坦な土地にある市民センターも使ったらいいのではないか、など、地域の特色にあわせた計画が必要になってきます。

小泉─災害が大きくなればなるほど、役所の職員の方も大変ですね。

奥山─大きな災害になれば職員も仕事が増え、避難所に駆けつけられる人数もどうしても限られてきますので、地域の住民のみなさんにできるだけお手伝いいただかないといけません。
 今年はそういった避難所運営に関するご意見を伺うためのお知らせがみなさんのところにたくさん届きますのでぜひ、ご協力をお願いします。

小泉─奥山市長らしい取り組みですね。この後はどんなビジョンをお持ちですか。

奥山─やはり、このあとは経済です。失業された方も多いですし仙台の人口も増えています。仙台市としては失業された方々が生活できるよう職の提供をしていきます。ものづくり産業特区、農と食のフロンティア特区、情報サービス関連産業特区を設け、企業の再建や誘致を促進し、雇用創出につなげていきます。また、中心部商店街に開設した「東北ろっけんパーク」では東北6県全体の物産・観光の魅力を発信しています。仙台がにぎわうことで東北全体に波及効果が及ぶと思うので、これからはにぎわいづくりの施策が大事です。


小泉─4月からは仙台・宮城デスティネーションキャンペーンも始まりますね。

奥山─観光の落ち込みをここで回復したいと思います。前回のキャンペーンは秋開催でしたが、今回は「春の東北」ということで、新しい魅力を発信していきたいですね。

小泉─市長のつけてらっしゃるピンクのバッジですね!

奥山─そうです!これはデスティネーションキャンペーンPR用の缶バッジで、市民・県民10万人を目標につけてもらって、笑顔で観光客のみなさんをお迎えしたいと考えています。私も、商店街の女性たちが組織した「仙台・街でもてなし隊」の名誉隊長ということで、がんばります。ほとんど女性のメンバーなのですが…中には若干の志ある男性のメンバーも(笑)

小泉─楽しくなりそうですね(笑)9月にはまた大きな…

奥山─全国商工会議所女性会連合会の全国大会が仙台で開かれます。3000人以上の参加者です。美味しいものをたくさん食べていただき、お買い物もたくさんしていただいて、経済の活性化につながればいいですね。女性のパワーというのはすごいものがありますから。
 今回の震災では女性の頑張りがとても大きな役割を果たしました。仮設住宅でも茶話会や手仕事など女性の集まりがたくさん開かれ、気持ちで負けないようにしようという女性たちの取り組みは本当に大きな力で、市長としては感謝しかありません。
 昨年10月には国連から防災模範(ロールモデル)都市として指定していただきました。これも、こうした市民みなさんの自発的な活動の力あってのものだと思っています。
 杜の都・仙台のみなさんの底力をたくさん見せていただいた2年間でした。市長として、仙台の復興はできないことでは全くないと考えていますので、106万人のみなさんの力で自信を持って進んでいきましょう。早く、世界中のみなさんに「今はこんなに元気になりました」と感謝の報告ができるようになりたいと思っています。

小泉─では、最後にわんからっとエルの読者に一言お願いできますか。

奥山─ 今回の震災では「絆」ということをとても大切に思われた方が多いと思います。普段の生活に徐々に戻っていくなかで、震災のときに感じた絆を大切に想う気持ちを持ち続けていくこと、そしてその絆を続けていく工夫が大事です。たとえば仮設住宅で手仕事で作られている小物を買ってみたり、誰かと声をかけあったりということが、復興への大きな力になると思います。わんからっとエルの読者のみなさんは普段から“絆”を大切にしていらっしゃる方々だと思うので、その力に期待しています。

小泉─本日は、お忙しいところ「わんからっとL新春スペシャル特別号」のために、わざわざお時間を作ってくださりありがとうございました。




   

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誠実さと情熱とそしてたゆまぬ努力と
 こんにちは、わんからっとL68号をお届けします。お陰様で平成8年に創刊したわんからっとLも早いもので17周年を迎えます。今の時代だからこそ「女性起業家を応援する新聞マガジン」というこの情報誌が、時代にマッチしているなぁと、そしてよくぞ続いてきたものだと私自身が思う次第です。
 「先見の明がありましたね」と、最近になってよく言われることですが、それほど先の先まで見据えて創刊したわけではありませんでしたが、ただ私は15歳の時からペンで身を立てたいと“決意”だけはしていました。
 人それぞれ個性があって生まれてきます。しかし、一生懸命努力しても、真面目で正直者であっても努力が報われないまま、死んでいく人もいます。世の中は“不条理”であり“無常”だとすでに悟っていました。平等ではないのだとも思いました。では、誰もが持っていて平等なものは何かと15歳の私は思いました。「時間」と「母国語」だと気づきました。
 たまたま私は子供の頃から言葉に敏感であり、感受性が強く、文章を書くことがとても好きでした。だから“物書き”の職業になりたかったのです。ペンで自分の人生を切り開いていこうと、15歳の春に思いました。その思いが強かったのでしょうか、今になってこういう“カタチ”になってきたのだと思います。物書きの職業も時代に合っていなければ成り立ちませんから。
 先日、私はアメリカ大リーグに行くか日本に留まるかと日本中を沸かせた高校球児を育てた花巻東高等学校の硬式野球部監督である佐々木洋先生の講演を聞く機会がありました。「生徒には『目標を持つ』ということ、そして『夢が人生を作るのだ』ということ。そのためには『チャレンジすることだ』と、教えています」と語っていました。
編集長

 卓球でオリンピックに出場した福原愛さんもラケットを初めてお母さんから持たされた3歳の時のことを、いまでも“ハッキリ”と覚えていると言っています。
 イチロー選手の小学6年生の卒業文集はあまりにも有名ですね。
 人は、それぞれ何かの意味があって誰かとつながって生かされながら暮らしています。一人ひとりに顔も物の考え方も違いますから、自分の得意とすることで精一杯時間を掛けて努力を惜しまず、そして誠実な姿勢で毎日をコツコツと“目標”に向かって生きていけば、自ずと必然的に、自分がなりたいと思う人生になっていくのだと思います。人との出会いも、すべてが偶然ではなく、必然的な出会いとなって道が開かれていくのではないだろうかと思うのです。そんなメッセージを込めて、このわんからっとLという情報誌を創ってきました。
 これからもさらに努力と創意工夫を積み重ねて他社にはできないきめ細かなフットワークで、地域情報誌を創っていきたいと思っています。顔の見える人と人とをつなぎ、お役に立ち、元気の出るコミュニケーションツールとして、情熱を持って邁進していきますので、今後ともよろしくお願い致します。

わんからっとL編集長
小泉知加子