女性起業家を応援するヒューマンネットワーク新聞マガジン「わんからっとL」

わんからっとL 53号

2009/05


熱い思いを宮城から発信



小泉

 今回わんからっとLの13周年記念特集といたしまして、村井知事と宮城県で活躍されている女性経営者3人をお招きし、座談会を進めさせていただきたいと思います。最初に村井知事から、知事になられるまでの経歴をお聞かせ下さい。

村井

 私は防衛大学校を出て自衛官を8年やっておりました。退官して松下政経塾で3年間勉強し、平成7年から宮城県議会議員を3期10年務めた後、知事になりました。

小泉

 早いもので今年4年目を迎えられるのですね。では次に、(株)カリーナを経営していらっしゃる赤塚様から自己紹介をお願いします。赤塚様は飲食店15店舗を展開し、平成17年にはウエディング事業にも参入され、今年から仙台駅の食材王国みやぎブースで物販事業も展開されています。

赤塚

 40年間経営してきた中でこのような厳しい経営環境は初めてですが、自分だけではなく世界中が不況なわけですから負けていられないということで新規事業にも取り組んでいます。近年は産地偽装や表示偽造など食の安心安全に関わる事件が多く、胸を痛めております。自分が正直にやっていても目が届かない部分もありますから、知事も力を入れてくださっているとは思いますが、この機会にさらに実効性のある対策をお願いしたいと思います。

小泉

 (株)北洲は村上様のお父様が昭和33年に創業され、ハウジングと建設資材の二部門を柱に東北で広く事業を展開されています。ちょうど知事も企業訪問されたそうですね。

村井

 実際に行ってみると本当にすばらしい家ですね。高断熱で冬でもすごく暖かい。

村上

 私どもは「北国にあったかい住まいを」という思いで北洲ハウジングの名で住宅建設をしております。おかげ様で宮城では5千棟以上の家づくりに関わってきました。この宮城にしっかりと根付き、そこから東北に発信していきたいと思っています。

小泉

 続いて欅産業(株)の大原敦子様です。大原様もお父様が昭和53年に創業なさり、仙台箪笥など東北の工芸家具の製作販売をされています。数々のコンクールで受賞されるなどその技術は高く評価され、近年はショールーム「インテリアカフェけやき」もオープンするなど販売にも力を入れていらっしゃいます。

大原

 私どもの会社は代々仙台箪笥を作ってきたというわけではなく、東北の工芸家具が大好きだった父が、炎が消えそうな仙台箪笥の技術を後世に伝えていきたいという思いで創業しました。コンクールに積極的に出品しているのは、伝統の工芸品という名前の上に胡坐をかくことなく、皆さんに評価していただくことで技を磨いていきたいという思いからです。平成18年には仙台箪笥、仙台民芸箪笥を社名と共に商標登録し、全国の百貨店で開催する宮城県物産展にも毎回参加させていただいています。

小泉

 皆様の熱い思いを宮城県から発信していけるよう、県の方でもさらなるPRを期待したいところです。


将来性が魅力の東北・宮城

小泉

 知事は大阪府出身とのことですが、なぜ宮城県で知事になられたのですか。

村井

 自衛隊にいた頃、たまたま赴任先が東北になり、実際来てみると非常に住みやすかったんです。既に家や工場が建ち並んでいる関東や関西と違い、東北はまだまだ発展の余地がある。どうせやるなら将来性のある場所でやりたいと思いました。中でも宮城県は東北の中心という思いがあったからです。

小泉

 県会議員時代からいつかは知事にと考えておられたのですか。

村井

 とんでもないことです。与えられた仕事をコツコツ続けながら、ちょっと上を目指して頑張っていくうちにパッと大きな目標が見えてきて思い切ってチャレンジした、という感じです。最初から知事を目指していればたぶん知事にはなっていなかったのではないでしょうか。


県政へ期待すること

小泉

 知事としてこれまで関わってこられた職務内容についてお聞かせ下さい。

村井

 行政の一番大切な仕事は福祉や教育、環境であり、そのために皆さんから貴重な税金を頂いています。ただ宮城県の財源はかなり苦しい状況であり、そうした分野に力を入れるためにも、まず産業の振興により県民の皆さんに豊かになっていただくことを県政の最優先課題にしました。それが「富県宮城の実現」です。
 これまで宮城県は支店経済と言われ、黙っていても東京から人が集まり、サービス産業中心の県で十分成り立っていました。しかし、情報化が進んで宮城に支店を設けなくてもビジネスが可能になった今、若い人が定着できるような産業を新たに育てていかなければいずれ立ち行かなくなってしまいます。そんな思いから、特に製造業の企業訪問に邁進してきました。企業誘致によって人が増えれば結果的に一次産業も三次産業もよくなってくるでしょうし、その礎を築けたことがこの4年間の成果かなと思います。
 また、農水産物の地産地消と同様に、今年度は地元に税金を納めている企業をみんなで育てていこうという運動を推進していきます。ちょっとした商品でもサービスでもみんなが協力して地元のもの、地元のお店を選べばかなり違ってくると思います。

小泉

 今日は貴重な機会でもありますので、ぜひ知事に実現してもらいたいことを一言ずつお願いします。

赤塚

 製造業に力を入れて末端のサービス業までという知事の取り組みには、私も大きな期待を寄せています。こういう経済状態の中、私たちもめげずに頑張ってまいりますので、知事も初心を貫いて何としても富県宮城を実現していただきたいと思います。

村上

 宮城県の地場産業を発展させるためには、助成金で企業を存続させるより、日本全国の各地域のトップリーダーとなる企業、たくましい潜在力のある会社を見つけていただき、そこから販路を広げていくという活動も必要だと思います。それもぜひ知事にお願いしたいですね。

大原

 県外のアンテナショップだけではなく、宮城県内にも観光の基盤となる物産館が必要だと思います。高速料金の値下げでこれからますます関東方面から訪れる人が増えると思いますし、そういう人に対して物を売るだけでなく、住宅や福祉も含めて住んでみたいと思わせる宮城の魅力を発信する場にしていけば面白いのではないでしょうか。


「富県宮城」を私たちから

小泉

 では最後に、「未来の宮城県の益々の発展に期待」ということで一言ずつお願いします。

村井

 わんからっとLさんの取材だからというわけではないのですが、女性の能力を発揮する機会がまだまだ不十分で非常にもったいない気がします。県庁でも女性管理職は増えてきましたが、やはり女性の視点でなければわからない、なるほどなという政策も出てくるんですね。女性と男性がバランスよく社会に出て支え合い、補い合って活動できるような環境づくりが富県宮城を進めていく上で一つのポイントだと思います。

赤塚

 富県宮城の実現には、税金を納める会社が増えることが重要ですが、飲食業は誰でもすぐに始められるため健全経営とは言えない店もどんどん参入し、店舗経営や会社経営に命を張って頑張っている企業が無駄に過当競争させられています。最初の1、2年はともかく、3年目以降になったら県でも何らかの制度を作ることが必要だと思います。

村上

 今、宮城県だけでなく東北全体から優れた人材がどんどん流出しています。人口だけでなく富まで流出しているのは非常にもったいないことであり、何とか歯止めをかけないと大変なことになります。その点をぜひ村井知事にお願いしたいと思います。

大原

 都内まで1時間ちょっとという利便性を生かし、躍動感あるムードや話題性をさらに高めて、全国の住みたい街ランキングに挙げられるような街にしたいですね。ミーハーではありますがそういうところから県民のやる気も出てくると思いますし、ぜひ新しい仙台商人魂で宮城の魅力をアピールしていってほしいと思います。

小泉

 ご出席された皆様が、富県宮城を私達からという思いでこれから活躍されることを願いまして、座談会を終了させていただきます。本日はありがとうございました。