講師の山田さんは家族社会学・感情社会学を専門とし、「パラサイト・シングル」「格差社会」などの言葉の生みの親として知られています。
講演では、社会や経済の変化による家族のあり方の変遷について紹介し、「将来的な生活の見通しが立たなくなり、妻がパートで夫の収入を支える程度では厳しい状況となった今、企業の側でも“とにかく売る”時代は過ぎ、女性の感性を生かしたプラスアルファが必要になっている。
女性社員の雇用拡大や管理職増加に積極時に取り組む企業ほど収益性・成長性が高い傾向にある」と述べました。
また、これからの夫婦のあり方について「固定的な男女の役割に縛られることは男性にとっても重荷で、専業主婦を望む男性の割合が1剖強に激減するなど男性の意識も変わりつつある。
女性の収入が高ければ男性が専業主夫をやるのもいいし、二人が適度に働きながらやっていくのもいい。自分たちに合ったバランスを取ることが大切」と提言しました。
コーディネーター: | 高木龍一郎さん(東北学院大学法学部教授)
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パネラー: | 立田ふぢ子さん(白石まちづくり(株)事務局)
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| 長原 博さん(NECトーキン(株)取締役人事総務部長)
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| 小泉知加子さん(わんからっとL編集長)
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■高木−本日はワーク・ライフ・バランスの考え方を取り入れながら地域も元気にしていこうということで、三人の方に事例報告していただきます。
■長原−優秀な人材に定着してもらうため、当社ではワーク・ライフ・バランスを重視した制度の整備を進め、昨年度「ポジティブアクション推進事業」として宮城県知事の表彰を受けました。
社員のライフスタイルや価値観の変化に対応し、会社と個人がお互いに最大限のメリットがあるようバランスをとりながら、育児休暇は最長3年、介護休暇は1年など法定を上回る期間を制定し、ライフサポート休暇(多目的休暇)や裁量労働制度なども導入しています。
■小泉−女性起業家を支援する情報誌を創刊し、今年で12年目になります。夫の転勤で仙台に来たものの物書きになりたい思いが忘れられず、手探りで取材ごっこをしていくうちに、「自己実現したい」「趣味をビジネスにしたいがどうすればよいかわからない」という自分と同じ視点の女性に数多く出会い、平成8年に「わんからっとL」を創刊しました。
今日まで続けることができたのは、時代に助けられ、人の緑に支えられながら諦めないで前進してきたからだと思います。
■立田−白石まちづくり株式会社は、中心市街地活性化を目指して平成15年に設立され、明治〜大正の面影を残す商家「壽丸(すまる)屋敷」を活動拠点に、「すまiるひろば」「カフェギャラリー蔵楽(くらら)」と併せ、地域と手を結びながら年間を通じて様々なイベントを開催しています。
10月に行われる「白石城下きものまつり」は女性に人気で、最近は着物姿の男性も多く参加するようになりました。
私自身この仕事に携わって2年になりますが、家族の協力のありがたさや、「自分の幸せが周りを幸せにする」ということを最近強く感じています。
■高木−女性が社会に出る上で障害もあると思われますが、いかがですか。
■小泉−私自身もそうでしたが、取材を通し、女性が起業する場合の一番の障害は夫という例をたくさん見てきました。
しかし最近の30〜40代の女性に話を聞くと、夫婦で家事を分担しながらお互いのやりたいことを応援している傾向を感じます。事業の成功の上で協力者の存在は欠かせませんが、協力者が家族というのは一番ハッピーなことではないでしょうか。
■立田−私も最初は主婦が外に出ることを引け目に感じていましたが、実際始めてみると家族も協力的で「街づくりだもんね」と言ってくれます。もっと早く決断していればと思いましたね。
■長原−人というのは財産ですから、個人が成長して貢献すれば企業全体の活力になります。当社では社員が自分の人生を考える機会を設けています。定年後の人生も相当長いわけですから、社内だけでなく社会時にも価値がある人間になることも大切ではないでしょうか。
■高木−ワーク・ライフ・バランスを考えると結果的に男女共同参画が実現し、女性のみならず企業や社会にとってもプラスになるということですね。本日はありがとうございました。