女性起業家を応援するヒューマンネットワーク新聞マガジン「わんからっとL」

わんからっとL 49号

2008/05



 わんからっとL12周年記念巻頭特集は、仙台市の二人の女性副市長、岩阜b美子さんと奥山恵美子さんをお迎えしてのスペシャル対談。
 活性化に向けた各種事業や、潤いと安らぎのある環境の創造、福祉対策や安全・安心の街づくりなど、「未来の仙台市の益々の発展に期待!」をテーマに、仙台市そして仙台市長を支える立場から語っていただきました。司会はわんからっとL編集長の小泉知加子。

それぞれの専門分野を生かして

小泉−わんからっとL12周年記念特集ということで、今回は仙台市の女性副市長お二人にお話を伺いたいと思います。タイトルは「未来の仙台市の益々の発展に期待!」ということで、それぞれのお立場からお話を聞かせていただければと思います。
 それではまず、副市長になられる前の職歴からお聞かせください。

−私は新潟出身で、新潟大学医学部を卒業した後はずっと病院の勤務医をやっておりました。50歳を前にインド、タイ、パラグアイと途上国で医療活動をするようになり、その後は厚生労働省仙台検疫所に務めておりました。

小泉−副市長にと声が掛かったきっかけはあったのでしょうか。

−私は国の安全諸対策やテロ対策など、ずっと危機管理をやっておりましたので、梅原市長にはその点を評価していただいたんだと思います。危機管理に力を入れておられる首長さんがいらっしゃったことは私自身も嬉しかったですね。

奥山−私は昭和50年に仙台市役所に入庁し、30数年間勤務してきました。消費者行政や男女共同参画、社会教育などに携わりながら、街の人たちと一緒にイベントや啓発事業を行ってきました。

小泉−奥山さんは、仙台市教育委員会教育長やせんだいメディアテ−ク館長も務められたのですね。では次に、副市長になってから関わってこられた職務内容をお聞かせください。

−私の担当は、まず危機管理です。宮城県沖地震などの災害に備え、昨年はシュミレーションや訓練を行って防災基盤づくりに取り組んできましたが、今後は自助・共助による地域防災力も強化していきたいですね。
 健康に関しては、インフルエンザや風疹、はしか等について講演を行うなどの広報活動のほか、感染症拡大防止策についてもいち早く取り組めるようにしています。
 また、経済局も担当しています。街の活力を高めるためには中小企業や商店街の活性化が不可欠ですが、単純にお金を出せばいいというものでもなく、地元企業や地域の商店街の皆様が元気になるような、きめ細かな支援を行っていきます。

奥山−私は環境行政と子供未来局、いわゆる子育て支援を担当しています。ご承知の通り、環境行政で今一番の課題は10月からの家庭ごみ等の有料化の実地です。議会で条例の審査をいただいた昨年に続き、本年2月からは市内の約1,370の町内会を対象とした説明会も始まりました。仙台市の場合、100万市民のうち、毎年転出入される方は約10万人ということですから、適正なごみ排出のための啓発はまだまだ必要です。
 子育て支援に関しては、保育所や児童館等の施設が充分になるよう努めてはいるものの、入所を希望される方々もそれを上回るスピードで増えており、女性の就業意欲がますます高くなっていることを感じます。私立も含め、多様な保育基盤の整備が必要ですね。

小泉−笠原副市長さんと3人の副市長でそれぞれ担当を分けていらっしゃるのですね。

−一緒に行動することはほとんどないのですが、できるだけ情報を共有するため、時々食事しながら情報交換をしているんですよ。


女性ならではの視点から

■小泉−仕事の上で、困難を感じられることはありますか。

■岩普|これから人口が減少していく時代になれば、隣近所がお互いに面倒を見合わなければなりませんし、町内会にはもっと活躍していただかなければなりません。そうした所に入っていって活動する際に、「仙台の人間じゃないから」という見方をされ、とまどうことがあります。私自身はそんな意識はないのですが、いかに溶け込むかはちょっと気を遣いますね。
 あとは、男性中心の社会であることに時々驚かされます。日本は多かれ少なかれどこでもそうなのかもしれませんが、仙台は特にそんな風潮が強い気がします。男性中心で悪いとは全く思いませんし、男性の活躍の場を奪ったり壊したりする気もありませんが、その中に女性の視点や女性の力を入れていくのは、我々の仕事かなと思っています。

■奥山−地域防災に関しても、もし避難所の開設が必要となった時に小さい子がいたらどうする、お年寄りがいたらどうする、といったことを具体的に考えられるのは女性の発想ではないでしょうか。昨年、岩封寰s長さんは防災・減災シンポジウム「女性の視点に立った地震災害対策」も開かれましたね。

■岩普|形にこだわらず現実的な女性の視点はとても大切だし、その点はまだまだ遅れていますから、これから我々がやらなければと思っています。

■小泉−我々が、と仰っていただけるのは本当に心強いですね。副市長三人のうち二人が女性というのは全国的にも珍しいのでしょうか。

■岩普|珍しいですね。まして、名前も同じですし(笑)


市長を支える立場として

■小泉−梅原市長のこの2年間をどう評価していらっしゃいますか。

■岩普|一緒にやってきて感じるのは、普通の自治体の首長にはない発想と行動力がある方だということです。いろいろなことに興味を持たれ、一生懸命おやりになる。そもそも私が副市長になる決心をしたのは、市長の一生懸命な姿を見て、自分もできることで協力したいと思ったからなんです。役所の人にすればやりにくいこともあるかもしれませんが、その辺は支える私たちがうまくフォローできればと思っています。

■奥山−岩封寰s長さんが仰ったように、国のお仕事を長年務められ、新しい発想で物事を見たり考えたりなさる市長のやり方は、善かれ悪しかれ仙台方式に馴染んでしまっている我々には刺激になりますね。また、東京で培った人脈を生かして講師を招き、勉強会を開かれたこともありました。

■岩普|一地方都市が中央官庁の方々と結びつく機会はなかなかありませんよね。そういう意味で市長の人脈は貴重で、それを活用できるのは仙台市にとっても良いことだと思います。


仙台市に望むこと

■小泉−今年の4月から仙台市は様々な形で動き始め、10月からは仙台・宮城ディスティネーションキャンペーンも始まり、全国的にも注目される年になるかと思われます。東北の玄関口として、そして働きやすく暮らしやすい、子育てしやすい街として、仙台市がどのように発展してほしいかお聞かせください。

■岩普|人々が安心して暮らせる街づくりがしたいということは市長もずっと仰っていますが、やはり安全・安心の確保が第一ですね。一年掛けてそのためのシステムをしっかり整え、基礎づくりをしていきたいと思います。
 あとは経済発展ですね。仙台は支店経済都市で、大企業の支店はあるけど生産の拠点は少なく、今後は地元に適した仙台発の企業を生み出すことも必要ではないかと思います。単独では大手に敵わなくても、地元の企業同士が手を組むことで全く別な事業を創出したり、福祉事業に関しても、大儲けできなくても皆が満足できるようなしっかりしたシステムとして起業する、そういう考え方も一つだと思います。
 それから、やはり高齢化社会ですから、駅の近くに検査や検診、相談が受けられる施設や、気軽に運動できる場所があるといいなと。そういう街づくりも必要だと思います。

■小泉−奥山さんはいかがですか。

■奥山−ごみ有料化が軌道に乗ればそれで終わりなのではなく、その結果どれだけ地球環境に配慮した都市になれるのか、そこがむしろ大事だということを市長もよく仰っています。昨年はアル・ゴア氏の映画「不都合な真実」が仙台でも上映され、たくさんの方がご覧になりました。今年は北海道洞爺湖サミットが開催されますが、そうしたことをきっかけに、さらなるCO2削減等に取り組み、ワンランク上の環境都市を目指していければと思います。
 また、少子化がますます進む中、教育に関しても見直しが必要で、その取り組みの一つが来年4月からの中高一貫校の新設です。将来の仙台を担う人材の育成のためにも、きちんとした形で教育の力が上がるようにしていかなければならないと思います。
 乳幼児検診と妊婦検診については、この一年で岩封寰s長さんがずいぶん力を入れてくださいましたね。

■岩普|医師会のご協力もずいぶんいただきました。

■奥山−岩封寰s長さんがお医者様だからこそ、感染症対策にしても乳幼児検診の問題にしても、いろいろなことを医師会と連携して迅速に進められたのではないかと感心しております。


女性へのメッセージ

■小泉−わんからっとL読者の皆様と、働く女性に向けてメッセージをお願いします。

■岩普|私自身、母親・妻・女性としてちゃんとやってきたかと言われれば自信はありませんが、やはり「女だから」と言われたくない思いはありましたね。女性が第一線で仕事をしていくことは本当に大変で、おそらく男性の3倍くらいは努力が必要なのではないでしょうか。時間が経つと解決する問題もたくさんありますから、少々のことでめげたりせず、前を向いて自分のやりたいことに向っていくことだと思います。

■奥山−組織対組織で仕事をされる男性に対し、女性の場合、お客様から紹介された縁で新しい仕事が生まれたり、偶然会った方から新しい情報を得たりと、個人のネットワークや人とのつながりの中で仕事が広がっていくことが多いような気がします。そうしたつながりを大切にしながら、自分だけで全てやろうとするのではなく、周りの方の力もうまく生かして新しい扉を開いていければよいのではないでしょうか。

■小泉−最後に、わんからっとLに期待することがありましたらお聞かせください。

■奥山−これからもフットワークを生かして街のいろいろな面白い出来事等を紹介し、元気な人をどんどん発掘してほしいと期待しております。

■岩普|人は人との関係の中で学ぶことがたくさんありますから、常にアンテナをしっかり張っておくことが大切です。読まれた方がこういう人もいたのかと興味を広げられるような、そんな役割をお願いしたいと思います。

■小泉−本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。



   

しなやかに・ひたむきに・したたかに
編集長
 わんからっとL49号「夏に向けて号」をお届けします。 今回の号で12周年を迎えました。一年に4回の発行を続けて12年。改めて多くの皆様に感謝申し上げます。創刊当初1200部、会員0人からスタートでした。ゼロから何かを創り出すという時は、不思議と「失敗したらどうしよう」という不安な気持ちはまったくなかったです。「よしやるぞ!」と。 けれど、この先うまくいくとも思いませんでしたし、まして12年も続けられるとは思わなかったです。考えられなかったのが、返って良かったのかもしれません。
 多くの数知れない偶然に近い出会い。時代の流れを客観的にまた直感的にも感じられたこと。とんでもないアクシデントの時には必ずや助けてくれる糸口を教えてくれる人に出会い、アドバイスをいただけた強運な事などから、今日のわんからっとLがあります。
 人は、人に支えられ、励まし合いながら成長し、夢を語り、夢を叶え、また、これからの若い人たちを助け、恩返しすることができるのですね。
 人生とは、夢に向かって一生懸命努力し、生きることです−
 しなやかに・ひたむきに・したたかに。
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わんからっとL編集長
小泉知加子